音楽活動5周年を迎えた菅田将暉
アーティストとしての進化を
新曲＆代表曲で深掘り

2017年6月にリリースされた記念すべき1stシングル。前年にサッカー日本代表を応援することを目的とした「au BLUE CHALLENGE」のCMで使用されたあと、菅田が歌っていることが公表され、その歌声が大きく注目された。疾走感のあるビート、ライブ感にあふれたサウンドとエモーショナルな旋律は、2010年代以降の邦楽ロックの王道。「日本の風に背中押されて」など、サッカー日本代表へのエールを感じさせる歌詞もあるが、リスナー1人ひとりを鼓舞するような力強いボーカルが、この曲を普遍的な応援歌たらしめている。ミュージックビデオではバンドメンバーとともに菅田自身もギターを演奏。その後の音楽的なスタイルを明確に提示した。

山﨑賢人主演の日本テレビ系ドラマ「トドメの接吻」の主題歌となった3rdシングル。作詞作曲は石崎ひゅーいが手がけた。菅田にとって石崎はデビュー前からリスペクトする特別な存在だったが、彼はこの曲をきっかけに、菅田の音楽に欠かせない存在となった。楽曲の幕開けは、性急なアコースティックギターのストローク。勢いのあるビート、きらびやかで鋭利なギターフレーズとともに菅田は、孤独や寂しさ、そして、必死に愛を求め続ける“僕の歌”を響かせている。菅田将暉のアーティスト性や歌のパワーが前面に押し出された最初の代表曲と言えるだろう。山崎がゲスト出演したMVはYouTubeで1.5億回を超える再生数を記録している。

初の配信シングルにして、歌手・菅田将暉の存在を幅広い音楽ファンに知らしめた楽曲。作詞作曲は米津玄師。2017年に発表された米津の楽曲「灰色と青（+菅田将暉）」に続く両者のタッグによるこの曲は、ピアノの旋律とボーカルで始まり、“まちがいだらけの日々”を描き出す。決して理想的な人生ではないし、思い通りにいかないことも多い。でも、だからこそ“僕”は、かけがえのない“君”に出会えた──生きることの本質を射抜くような歌詞に、菅田は生き生きとした律動と感情を与えている。特に「君の目が貫いた 僕の胸を真っ直ぐ」というサビの解放感と切実さは、彼のシンガーとしての魅力を見事に証明している。

映画「STAND BY ME ドラえもん 2」主題歌に採用され、ストリーミング累計再生回数が3億回を突破した5thシングル。「一生そばに居るから 一生そばに居て」に象徴される、リスナーをそっと包み込むような温かさにあふれた歌詞とメロディの制作は、石崎ひゅーいが担当。映画のストーリーに寄り添いつつ、時代や流行に左右されないエバーグリーンなメッセージソングに仕上がっている。中心にあるのはやはり菅田の歌。すぐそばにいる大切な人に語りかけるような表現からは、シンガーとしてのさらなる成長がはっきりと伝わってくる。呉美保が監督を務め、菅田が俳優として出演したMVは、夫婦のつながりを描いたストーリーが話題を集めた。

「私今日は女だから」と菅田が歌い、「お前今日は女だから」とあいみょんが応える。2人が初めて出会った日の夜にあいみょんが作ったという「キスだけで feat. あいみょん」は、ジェンダーの枠を超え、聴く者の恋愛観や性愛のイメージを気持ちよく揺さぶってくれるミディアムバラードだ。「キスだけでいけそうなの」をはじめとする官能的でピュアな歌詞、そして、2人の声が重なる瞬間の生々しさこそが、この曲の核だろう。アレンジは菅田、あいみょん双方の楽曲を数多く手がけるトオミヨウ。フォーキーで素朴な手触りを感じさせるメロディ、エレクトロ的な浮遊感をたたえたサウンドのコントラストも魅惑的だ。

2022年10月28日に3年ぶりの有観客ツアーをスタートさせた菅田将暉。10月から2月にかけて開催中のツアーのタイトルを冠した新作「クワイエットジャーニー - EP」には、菅田がバンドメンバー“KNEEKIDS”と制作した新曲4曲が収録されている。

表題曲は、淡々とした雰囲気のバンドサウンドで始まり、徐々に高揚感が高まっていくミディアムチューン。オルタナ / シューゲイザーの要素を取り入れたアレンジは、菅田の新機軸と言えそうだ。「静かな旅にでて見つめよう」というフレーズも印象的。コロナ禍を経験したことで得たものと失ったものをつづった歌詞、抑制を効かせながらも圧倒的な説得力を感じさせるボーカル、そして、バンドメンバーとのつながりが色濃く反映された新たな名曲だ。

心地いいビートを放つドラム、ファンキーなノリのギター、しなやかなラインで楽曲のボトムを支えるベース、そして軽やかなフレーズを奏でる鍵盤。「クワイエットジャーニー - EP」に収められた「ゆだねたギター」は、KNEEKIDSというバンドの個性が伝わってくる楽曲だ。菅田はバンドメンバーたちの自由な演奏に身を委ねるように、緩やかなグルーヴに乗せて歌唱している。リラックスした歌声からは、バンドの一員であることの喜びが伝わってくるよう。そこから想起される等身大の雰囲気もまた、この曲の魅力だろう。マリリン・モンロー、ギター、バンド、オーディエンス……これらが自然につながる歌詞にも注目。